歯が1本足りない先天性欠損|マウスピース矯正+接着ブリッジの症例

「歯が1本足りない」「前歯の本数が左右で違う」「歯が足りない場合でも矯正できるのか」と悩んでいる方へ。永久歯が生まれつき形成されない状態を先天性欠如(先天性欠損)といいます。この症例では、上の前歯の側切歯が1本ないことによる左右非対称と下の前歯のガタつきを、マウスピース矯正(インビザライン)と接着ブリッジを組み合わせて治療しました。

歯が1本足りない患者さまの症例概要

患者さまのお悩み・希望上の前歯が1本足りず、笑ったときの左右非対称が気になる。下の歯並びのガタつきも治したい。
診断上顎側切歯1本の先天性欠如、下顎前歯の叢生
治療方法マウスピース矯正(インビザライン)で歯並びと欠損部のスペースを整え、接着ブリッジで歯を補う
治療期間1年10か月
費用マウスピース矯正77万円、接着ブリッジ15万円(治療当時)

先天性欠損のビフォーアフター

上顎側切歯が1本足りない先天性欠損の治療前
治療前:上の2番目の歯(側切歯)が1本ない状態
マウスピース矯正と接着ブリッジによる先天性欠損の治療後
治療後:マウスピース矯正と接着ブリッジで左右差を改善

矯正だけで歯の位置を整えても、生まれつき歯がない部分そのものは補えません。本症例では、まずマウスピース矯正で前歯の位置・正中・接着ブリッジを入れるスペースを整え、その後に欠損部を補いました。

矯正で作ったすき間に接着ブリッジで歯を入れた前後の正面

先天性欠損は10人に1人ほどにみられます

日本小児歯科学会の全国調査では、第三大臼歯(親知らず)を除く永久歯の先天性欠如は、調査対象15,544人のうち1,568人、10.09%に認められました。珍しい状態ではなく、「永久歯が1本生えてこない」「乳歯が抜けたのに次の歯がない」ことをきっかけに分かる場合があります。

欠如しやすい部位は下顎第二小臼歯、下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎側切歯などです。上の前歯では、中央の歯の隣にある側切歯(前から2番目の歯)の先天性欠如がみられます。参考:日本小児歯科学会「永久歯先天性欠如に関する全国調査」

上の前歯が1本足りないと、正中や笑顔の左右差が目立つことがあります

笑ったときには、上顎の犬歯から反対側の犬歯までの6本の前歯がよく見えます。この6本の大きさや位置が左右で調和していると、整った印象につながります。片側の側切歯がない場合、空いたスペースに周囲の歯が移動し、上の前歯の中心(正中)が顔の中心からずれたり、中央の歯の横に大きな犬歯が並んだりするため、前歯が歪んで見えることがあります。

正中のずれを認識する境界には個人差があり、研究によっておよそ2〜4mmと幅があります。近年の研究では3mmのずれから気づかれやすくなり、4mmでは審美評価が大きく下がったと報告されています。ただし、顔の左右差や歯の形、口元の見え方によって印象は変わるため、数値だけで治療の要否は決まりません。

下の前歯が1本足りない場合

下顎の前歯にも先天性欠如は起こります。下の前歯は笑ったときに上の前歯に隠れやすいため、上顎側切歯の欠如ほど見た目が気にならない方もいます。一方で、歯の本数が少ないことで上下の歯の大きさのバランスや噛み合わせに影響する場合があり、スペースを閉じるのか、補うのかを検討する必要があります。

下の前歯が1本ない症例は、下顎前歯の先天性欠損をマウスピース矯正で治療した症例もご覧ください。

上顎側切歯がない場合の主な3つの治療方法

1.矯正でスペースを開け、接着ブリッジで補う

側切歯が本来ある位置に必要なスペースをつくり、両隣または片側の歯に接着する人工歯で補う方法です。歯を削る量を抑えやすく、外科手術を伴わないことが特長です。本症例ではこの方法を選択しました。

2.矯正でスペースを開け、インプラントで補う

隣の歯に支えを求めず、欠損部にインプラントを埋入して歯を補う方法です。顎の成長、骨や歯肉の状態、治療時期、外科処置への希望などを確認して適応を判断します。

3.矯正でスペースを閉じ、犬歯の形を整える

人工歯を入れず、犬歯を前方へ移動してスペースを閉じる方法です。中央の前歯の隣に犬歯が並ぶため、犬歯の大きさ・色・先端の形が気になる場合は、形態修正やダイレクトボンディング、ラミネートベニアなどを併用することがあります。噛み合わせによってはこの方法が適さないこともあります。

本症例でマウスピース矯正+接着ブリッジを選んだ理由

この患者さまは、欠損部だけでなく下の前歯のガタつきと、笑ったときの左右非対称も改善したいと希望されていました。そのため、接着ブリッジを先に入れるのではなく、マウスピース矯正で上下の歯並びと上顎正中を整え、側切歯に適したスペースを確保してから接着ブリッジを装着しました。

側切歯の部位は奥歯に比べて強い咬合力がかかりにくく、噛み合わせなどの条件が合えば、接着ブリッジは歯質をできるだけ残す選択肢になります。当院では、年齢、歯の成長、噛み合わせ、支えとなる歯のエナメル質、将来のメンテナンスまで確認したうえで選択します。すべての方に接着ブリッジが第一選択になるわけではありません。

接着ブリッジとは

接着ブリッジは、隣の歯の裏側に薄いウイングを接着し、歯がない部分を人工歯で補う治療です。一般的なブリッジより歯を削る量を抑えられる場合があります。インプラントのような外科手術を必要としない一方、噛み合わせや接着面積によっては外れたり、人工歯が欠けたりする可能性があります。外れた場合は状態を確認し、再接着または作り直しを検討します。

側切歯の先天性欠損部に装着する接着ブリッジ
接着ブリッジを歯の裏側から接着する構造

接着ブリッジ装着前後

矯正後、接着ブリッジ装着前の側切歯欠損スペース
マウスピース矯正後・接着ブリッジ装着前
側切歯欠損部への接着ブリッジ装着後
接着ブリッジ装着後

治療後の患者さまの感想

笑ったときの歯の見え方が左右対称になってよかったです。矯正期間中も目立ちにくく、痛みも少なく治療できました。


症例2:右上2番目の歯がない40代女性|矯正+犬歯の形態修正

右上の2番目の歯(側切歯)が生まれつきない、40代女性の症例です。側切歯がない側へ上の前歯が移動し、前歯の真ん中(上顎正中)が大きく右側へずれていました。

年代・性別40代・女性
歯の状態右上側切歯(右上2番)の先天性欠如、上顎正中の右方偏位
治療方法歯列矯正で歯を並べて欠損スペースを閉鎖し、矯正後に右上犬歯の形を修正
欠損部の対応接着ブリッジやインプラントで歯を追加せず、犬歯を側切歯の代わりとして活用

矯正治療のビフォーアフター

治療前は、右上側切歯がないスペースへ周囲の歯が移動し、上顎正中が欠損側へ大きくずれていました。歯列矯正で正中と前歯の並びを整え、欠損部のスペースを閉じています。

歯が1本足りない 矯正
歯が1本足りない 矯正

顔貌・スマイルのビフォーアフター

歯が1本足りない 矯正

正中のずれと前歯の左右差を整えることで、笑ったときの前歯の見え方も改善しました。顔貌写真では、歯だけでなく、顔の中心に対する前歯の位置とスマイル全体のバランスを確認します。

接着ブリッジを使わず、犬歯の形を整えた理由

この症例では、右上側切歯のスペースを開けて接着ブリッジを入れる方法ではなく、矯正治療でスペースを閉じる方法を選択しました。治療後の右上前歯は、中央から中切歯、犬歯の順に並んでいます。

犬歯は側切歯より大きく、先端が尖っているため、そのままでは反対側との形の違いが目立つことがあります。そこで矯正治療後に右上犬歯の形態を修正し、側切歯に近い形へ整えることで、可能な限り左右対称な前歯の見え方を目指しました。

側切歯が1本足りない場合でも、必ず人工の歯を入れるわけではありません。欠損スペースを開けて接着ブリッジやインプラントで補う方法と、スペースを閉じて犬歯の形を整える方法があり、正中のずれ、噛み合わせ、犬歯の位置・色・大きさを確認して選択します。

治療のリスク・注意点

  • マウスピースの装着時間が不足すると、計画どおりに歯が動かないことがあります。
  • 矯正中は痛み、違和感、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯・歯周病などが生じる可能性があります。
  • 治療後は後戻りを防ぐため、保定装置の使用が必要です。
  • 接着ブリッジは外れたり、欠けたりする可能性があり、再接着・修理・再製作が必要になることがあります。
  • 適応は欠損部の状態、噛み合わせ、支台歯の状態によって異なります。

歯が1本足りない場合の治療は、単に空いている部分を埋めるだけではありません。前歯の正中、歯の大きさ、スマイル時の左右差、噛み合わせを含めて、スペースを開けて補うのか、矯正で閉じるのかを決めることが大切です。詳しい選択肢は先天性欠損の治療案内、費用は料金ページもご確認ください。

マウスピース矯正専門ドクターに
なんでも相談できる60分

30秒でカンタン入力!

無料相談を予約する

【執筆・監修者】

Mouth Peace 矯正歯科 院長 中村竜三(歯学博士)

Mouth Peace 矯正歯科(大阪府松原市) 院長

中村 竜三 Ryuzo Nakamura

  • 歯学博士
  • インビザラインドクター
  • 国際口腔インプラント学会 認定医

広島大学を卒業後、同一の医療法人に約8年間勤務し、副院長を務めました。一般歯科で多くの患者様を診るなかで、天然の歯を長く残すには噛み合わせと歯並びの改善が欠かせないと考えるようになり、歯科スタディグループ SJCD で咬合を学んだのち、矯正治療へ軸足を移しています。

はじめはワイヤー矯正を中心に100症例以上を担当。その後、尾島賢治先生のセミナーをきっかけにマウスピース矯正へ本格的に取り組み、2023年11月にMouth Peace 矯正歯科を開院しました。ワイヤー矯正で培った「どの歯をどう動かせば理想の仕上がりになるか」という知見を、マウスピースの設計にそのまま活かしています。

現在は、他院で「マウスピース矯正では難しい」と診断された方のセカンドオピニオンを中心に、毎月50件以上のご相談をお受けしています。マウスピースの設計はすべて院長が一人ひとりに合わせて行い、矯正だけでは解決しない症例に備えて、インプラント・セラミック・歯周治療・咬合の再構築まで当院内で対応できる体制を整えています。また、全国の歯科医師に向けたセミナー講師や症例検討会での講演も務め、現在も学会・研究会での研鑽を続けています。

略歴

  • 広島大学 卒業
  • 医療法人にて約8年間勤務/副院長を務める
  • プリベンチャル守口駅前歯科 勤務
  • 2023年11月 Mouth Peace 矯正歯科 開院

所属学会・研究会

  • 日本アライナー矯正歯科学会
  • 日本顎咬合学会
  • 国際口腔インプラント学会
  • 即時荷重研究会

講演・受講コース

  • 日本アライナー矯正歯科研究会 症例検討会 講演
  • 即時荷重研究会 症例検討会 講演
  • Ciao 特別講演
  • ドーソンアカデミー(米国式・咬合のコース)受講
  • FIDI インプラントコース 受講

診療で扱う分野

  • マウスピース矯正(インビザライン)
  • ワイヤー矯正
  • 噛み合わせ治療
  • インプラント
  • セラミック治療
  • 歯周治療

本記事は、Mouth Peace 矯正歯科 院長・中村竜三(歯学博士)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会・研究会での知見、および当院での診療経験をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断をなさらず、歯科医院にご相談ください。
なお、矯正治療は自由診療(保険適用外)であり、歯の痛みや違和感、歯根吸収、後戻りなどのリスク・副作用を伴う場合があります。