出っ歯を抜歯せずに改善したマウスピース矯正症例

「出っ歯を治したいけれど、健康な歯はできるだけ抜きたくない」という方へ、抜歯なしのマウスピース矯正で改善した症例をご紹介します。非抜歯で治療できるかどうかは、歯を動かせる範囲、必要なスペース、噛み合わせ、骨や歯ぐきの状態、希望する口元の変化を総合して判断します。

すべての出っ歯を非抜歯で治せるわけではありません。このページでは、この患者様が非抜歯を選べた理由、前歯をさらに出さずに並べるための方法、抜歯を検討した方がよいケースまで説明します。

この症例の治療概要

患者さんのお悩み、希望
昔から歯が出ているのが気になっていて、笑って写真を撮った時に歯が出ているのがいつも嫌。
歯が出ているので、口が閉じにくく、前歯がよく乾燥する。
健康な歯は抜かずに、できるだけ前歯を引っ込めたい。装置はワイヤーは痛みが強いと友達から聞いたし、目立つのが嫌なので、マウスピース矯正で治療をして行きたい。
治療方法
マウスピース矯正で出っ歯を改善。歯並びを拡大、IPRをおこない前歯を引っ込めました。
治療期間
1年

出っ歯の非抜歯矯正 Before/After

出っ歯を抜歯なしで改善したマウスピース矯正のビフォーアフター
非抜歯マウスピース矯正前後の歯並び
出っ歯の非抜歯矯正前後の口元

治療前は前歯の突出感と口の閉じにくさが主なお悩みでした。この症例では、歯を並べる場所を先に確保し、そのスペースを利用して前歯を後方へ移動する計画を立てました。治療前後の写真で歯並び・前歯の位置・口元の変化を確認しながら治療を進めています。

写真はこの患者様の治療結果であり、同じ治療方法でも歯並びや骨格などによって結果は異なります。

なぜこの患者様は非抜歯で治療できたのか

前歯を引っ込めるには、その分のスペースが必要です。この患者様は、歯列の拡大とIPRを組み合わせて必要なスペースを確保できると診断したため、健康な歯を抜かない治療計画を選択しました。

  • 希望する前歯・口元の変化と、非抜歯で動かせる範囲が合っていた
  • 歯列の拡大とIPRで、前歯を後方へ移動するスペースを確保できた
  • 噛み合わせを保ちながらマウスピースで歯を動かせると判断した
  • 患者様が装着時間や顎間ゴムの使用に協力できた

非抜歯が適しているかは、見た目だけでは決められません。検査結果と希望する仕上がりを照らし合わせ、抜歯・非抜歯それぞれの変化と注意点を比較して決めることが重要です。

前歯をさらに出さずに並べるためのスペース確保

スペースが足りない状態で前歯だけをきれいに並べると、前歯が治療前より前方へ傾くことがあります。この症例では「並べるだけ」ではなく、歯列の拡大とIPRによってスペースを作り、そのスペースを使って前歯を後方へ移動しました。

非抜歯矯正で前歯を後方へ動かすためのスペース確保

歯列の拡大

歯列を診断上可能な範囲で横方向に整え、歯が並ぶスペースを作ります。拡大できる量には骨や歯ぐきの状態による限界があります。

IPR(歯と歯の間の調整)

歯と歯の間を少量調整してスペースを作る方法です。この症例ではIPRを行い、前歯を後方へ動かすためのスペースとして利用しました。実施量は歯の形やエナメル質の状態を確認して決定します。

この症例では顎間ゴムも使用

この症例では、前歯と噛み合わせを計画した位置へ導くために顎間ゴムを使用しました。必要性や使用期間は症例によって異なります。指示された使用時間が不足すると、計画どおりに進まない場合があります。

出っ歯のマウスピース矯正で使用する顎間ゴム

非抜歯矯正で歯並びだけでなく、横顔や口元がどのように変化するか確認したい方は、奥歯の遠心移動でスペースを作り、上の前歯を約5mm後退させた「非抜歯で横顔・口元も改善した症例」もご覧ください。

非抜歯では難しいことがある出っ歯

歯を抜かないこと自体を目的にすると、希望する口元の変化が得られなかったり、前歯が前方へ傾いたりする可能性があります。次のような場合は、抜歯矯正やほかの治療方法も含めて検討します。

  • 口元を大きく後方へ下げたい場合
  • 歯の重なりが強く、非抜歯では十分なスペースを確保しにくい場合
  • 遠心移動・拡大・IPRだけでは前歯を下げる量が不足する場合
  • 骨格的な要因が大きい場合
  • 歯を支える骨や歯ぐきの状態から、移動範囲に制限がある場合

抜歯の要否は、歯並びや噛み合わせだけでなく、横顔や唇の位置、患者様が希望する変化まで含めて判断します。

抜歯矯正による口元の変化の症例写真

マウスピース矯正で出っ歯を治療する際の考え方は、以下の記事でも詳しく解説しています。

治療期間・費用・患者様の感想

患者さんの感想
矯正治療中も目立つことなく、周囲の人には気づかれずに、出っ歯が治ったのでとても満足しています。笑った時に歯が出ているので、写真を撮るときはいつも無意識に口を閉じて撮っていましたが、歯を見せて笑えるようになったのでよかったです。マウスピースつけているときは、基本的に水しか飲めないのが辛かったですが、1年という短期間で終わったので我慢できました。スタッフの皆さんもとても親切に接してくれ、最後まで頑張れました。やってよかったです。
リスク
マウスピースの装着時間が不足すると、計画どおりに歯が動かない可能性があります。治療中は痛みや違和感、むし歯・歯周病、歯根吸収、歯肉退縮、治療後の後戻りなどが生じることがあります。治療結果・期間には個人差があります。
費用
マウスピース矯正 70万円(税抜)加速装置3万円(税抜)(診断、抜歯、調整料は全て込み)

歯を抜かずに治せるか、症例と同じ基準で診断します

ご希望を伺ったうえで、検査結果をもとに、非抜歯にした場合と抜歯した場合の口元・噛み合わせ・治療計画の違いを説明します。非抜歯をご希望の場合も、難しい理由があるときは無理に進めず、選択肢を比較してご案内します。

【執筆・監修者】

Mouth Peace 矯正歯科 院長 中村竜三(歯学博士)

Mouth Peace 矯正歯科(大阪府松原市) 院長

中村 竜三 Ryuzo Nakamura

  • 歯学博士
  • インビザラインドクター
  • 国際口腔インプラント学会 認定医

広島大学を卒業後、同一の医療法人に約8年間勤務し、副院長を務めました。一般歯科で多くの患者様を診るなかで、天然の歯を長く残すには噛み合わせと歯並びの改善が欠かせないと考えるようになり、歯科スタディグループ SJCD で咬合を学んだのち、矯正治療へ軸足を移しています。

はじめはワイヤー矯正を中心に100症例以上を担当。その後、尾島賢治先生のセミナーをきっかけにマウスピース矯正へ本格的に取り組み、2023年11月にMouth Peace 矯正歯科を開院しました。ワイヤー矯正で培った「どの歯をどう動かせば理想の仕上がりになるか」という知見を、マウスピースの設計にそのまま活かしています。

現在は、他院で「マウスピース矯正では難しい」と診断された方のセカンドオピニオンを中心に、毎月50件以上のご相談をお受けしています。マウスピースの設計はすべて院長が一人ひとりに合わせて行い、矯正だけでは解決しない症例に備えて、インプラント・セラミック・歯周治療・咬合の再構築まで当院内で対応できる体制を整えています。また、全国の歯科医師に向けたセミナー講師や症例検討会での講演も務め、現在も学会・研究会での研鑽を続けています。

略歴

  • 広島大学 卒業
  • 医療法人にて約8年間勤務/副院長を務める
  • プリベンチャル守口駅前歯科 勤務
  • 2023年11月 Mouth Peace 矯正歯科 開院

所属学会・研究会

  • 日本アライナー矯正歯科学会
  • 日本顎咬合学会
  • 国際口腔インプラント学会
  • 即時荷重研究会

講演・受講コース

  • 日本アライナー矯正歯科研究会 症例検討会 講演
  • 即時荷重研究会 症例検討会 講演
  • Ciao 特別講演
  • ドーソンアカデミー(米国式・咬合のコース)受講
  • FIDI インプラントコース 受講

診療で扱う分野

  • マウスピース矯正(インビザライン)
  • ワイヤー矯正
  • 噛み合わせ治療
  • インプラント
  • セラミック治療
  • 歯周治療

本記事は、Mouth Peace 矯正歯科 院長・中村竜三(歯学博士)が執筆・監修しています。内容は診療ガイドラインや学会・研究会での知見、および当院での診療経験をもとに作成していますが、症状や適切な治療方針には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断をなさらず、歯科医院にご相談ください。
なお、矯正治療は自由診療(保険適用外)であり、歯の痛みや違和感、歯根吸収、後戻りなどのリスク・副作用を伴う場合があります。