片方だけ八重歯は矯正できる?抜歯・非抜歯と歯の真ん中のずれ

片方だけ八重歯 マウスピース矯正での治療方法

「八重歯が片方だけある」「左右で歯並びが違う」と気になっている方へ。片方だけの八重歯も、マウスピース矯正で治療できます。ただし、単に八重歯を並べるだけではなく、上の歯の真ん中(上顎正中)が顔の真ん中に対してどこにあるかを確認することが重要です。

片方だけ八重歯がある方では、上顎正中が八重歯のある側へずれていることがあります。この状態で八重歯側の小臼歯だけを抜歯すると、歯はきれいに並んでも、歯の真ん中と顔の真ん中が一致しない可能性があります。この記事では、片側だけ抜歯する場合、左右を抜歯する場合、非抜歯で治す場合の考え方を解説します。八重歯矯正全体の方法は「八重歯はマウスピース矯正で治せる?」もご覧ください。

片方だけの八重歯で最初に確認すること

治療方法を決める前に、次の3つを確認します。

  • 上の歯の真ん中と顔の真ん中が合っているか
  • 正中のずれが歯の位置によるものか、顎の骨格によるものか
  • 治療後に口元を引っ込めたいか、今の口元を大きく変えたくないか

歯の真ん中は、一般的には左右の上顎中切歯の間を基準にします。一方、顔の真ん中は鼻や人中、顎などを参考にします。ただし、顔そのものに左右差があることも多いため、1か所だけで判断せず、正面写真・笑顔の写真・口腔内写真・歯型または口腔内スキャンなどを総合して診断します。

なぜ片方だけ八重歯になるのか

八重歯は、犬歯が並ぶためのスペースが不足し、歯列の外側や上方に生えている状態です。片方だけに現れる背景には、左右で歯が生える順番やスペース量が異なる、乳歯が抜ける時期に差がある、歯の大きさと顎の大きさが合っていない、奥歯の位置や噛み合わせに左右差があるなど、複数の要因があります。

見た目は「八重歯が片方だけ」という同じ状態でも、必要なスペース量や奥歯の噛み合わせ、前歯の傾き、口元の突出感は一人ひとり異なります。そのため、写真だけで抜歯・非抜歯を決めることはできません。

片方だけ八重歯があり、歯の真ん中もずれている場合

片方だけ八重歯がある方では、上顎正中が八重歯のある側へずれていることがよくあります。この場合、治療前に「歯を並べること」を優先するのか、「歯の真ん中を顔の真ん中へ近づけること」まで希望するのかを確認します。

左右の小臼歯を抜歯する方法

片方だけ八重歯 抜歯矯正
片方だけ八重歯 抜歯矯正 顔の変化
八重歯矯正 顔の変化
片方だけ八重歯 左右の小臼歯 抜歯矯正

歯の真ん中を顔の真ん中へ近づけたい場合や、左右ともに大きなスペースが必要な場合は、左右の小臼歯を抜歯する方法が選択肢になります。左右のスペースを使い分けながら、前歯の位置や正中を調整します。

左右を抜歯するかどうかは、正中だけでなく、前歯の突出量、口元、横顔、噛み合わせ、必要な移動量を含めて判断します。

非抜歯で治療する方法

片方だけ八重歯 非抜歯矯正
片方だけ八重歯 非抜歯矯正 顔の変化
片方だけ八重歯 非抜歯スペースの作り方

拡大、奥歯の遠心移動、IPR(歯と歯の間を少量削ってスペースを作る方法)などで必要なスペースを確保できる場合は、非抜歯で治療できる可能性があります。

ただし、無理に非抜歯で並べると前歯が前へ出て、口元の突出感が強くなることがあります。治療前のシミュレーションやセファロ分析などを用いて、歯を並べたときの前歯と口元の位置を確認することが大切です。

八重歯側の小臼歯だけを抜歯する方法

八重歯のある側の小臼歯を1本抜き、そのスペースを利用して犬歯を歯列内へ動かす方法です。歯を並べるためのスペースを効率よく確保できます。

ただし、片側だけ抜歯すると、上の歯の真ん中は抜歯側へ移動しやすくなります。もともと正中が八重歯側へずれている場合、歯並びは整っても顔の真ん中とは合わない、またはずれが残る可能性があります。正中の一致をどこまで治療目標にするか、事前の確認が必要です。抜歯による口元や顔貌の変化については「八重歯の抜歯矯正で顔は変わる?」で詳しく解説しています。

歯の真ん中が合っている場合の治療

片側だけ八重歯でも、上顎正中が顔の真ん中とおおむね合っている場合があります。この場合は、八重歯側の小臼歯のみを抜歯してスペースを作る方法、または非抜歯でスペースを確保する方法が候補になります。

どちらを選ぶかは、八重歯を並べるために必要なスペース、奥歯の前後的な関係、前歯の傾き、口元を引っ込めたいかどうかによって変わります。正中が合っているから必ず片側抜歯、あるいは必ず非抜歯になるわけではありません。

八重歯をマウスピース矯正で1年6か月治療した前後の歯並び
八重歯の治療前後の笑ったときの口元

片側だけ抜歯すると噛み合わせに問題が出る?

適切に診断し、上下の歯の位置や奥歯の関係を考えて治療すれば、片側だけ小臼歯を抜歯しても、噛み合わせに問題が生じることはありません。左右非対称の抜歯は、もともと左右差がある歯並びや噛み合わせを整えるために選ばれることがあります。

一方で、片側抜歯では抜歯側の歯列形態や上顎正中に変化が出やすいという報告もあります。そのため、歯を抜く本数だけを見るのではなく、治療後の正中、奥歯の噛み合わせ、スマイル時の見え方まで含めた治療計画が必要です。

歯の真ん中が顔の真ん中と合わなくても問題ない?

歯の真ん中が顔の真ん中と完全に一致していなくても、噛み合わせや健康上の問題が必ず起こるわけではありません。わずかなずれは、会話や笑顔の中では気にならないこともあります。

見た目についても、一般の方は数mm程度の正中のずれに気づきにくいことがあります。Kokichらの研究では、一般歯科医と一般の方は、笑顔写真上の上顎正中を4mmずらしても認識できませんでした。また、別の研究では、一般の方にとって審美的に許容できる上顎正中のずれの目安が4mmと報告されています。ただし、より小さなずれでも気づくという研究もあり、見え方は顔の左右差、前歯の傾き、唇との関係などによって変わります。そのため、「3〜4mm以内なら必ずわからない」とは言い切れません。

ただし、ご本人が正面から見たときのずれを強く気にしている場合は、治療後に後悔しないよう、どこまで改善できるのかを治療前に確認する必要があります。「八重歯がなくなればよい」のか、「顔と歯の真ん中も合わせたい」のかによって、適した治療計画が変わります。

骨格が原因の正中ずれは歯列矯正だけでは難しいことも

正中のずれには、歯の位置による歯性のずれと、上下の顎や顔面骨格の左右差による骨格性のずれがあります。歯性のずれであれば歯の移動で改善できる可能性がありますが、骨格的なずれが大きい場合、歯列矯正だけで顔と歯の真ん中を完全に一致させることが難しい場合があります。

骨格性かどうかは、正面・側面の顔貌写真、口腔内診査、噛み合わせ、必要に応じて正面セファロなどを用いて判断します。程度や希望によっては、歯列矯正で目立ちにくくする治療、または外科的矯正治療を含めて検討します。

片方だけの八重歯はマウスピース矯正で治せる?

片方だけの八重歯も、必要な移動量や歯根の位置、噛み合わせによってはマウスピース矯正で治療できます。非抜歯だけでなく、抜歯を伴うマウスピース矯正が適応になります。

今回のご紹介した症例は全てマウスピース矯正のみで治療したものです。

片方だけ八重歯がある方の治療方針まとめ

  • まず、上の歯の真ん中と顔の真ん中の位置を確認する
  • 片側抜歯では、上顎正中が抜歯側へ移動しやすいことを理解する
  • 正中を合わせたい場合は、左右抜歯または非抜歯も含めて比較する
  • 抜歯・非抜歯は、必要なスペースだけでなく口元や前歯の位置で判断する
  • 骨格性のずれは、歯列矯正だけでは改善に限界がある場合がある
  • 片側抜歯でも、適切な計画で噛み合わせを整えることは可能

よくある質問

片方だけ八重歯でも、八重歯そのものは抜かないのですか?

多くの場合、犬歯である八重歯を残し、その後方の小臼歯を抜歯してスペースを作ります。犬歯は噛み合わせで重要な役割を持つためです。ただし、歯の状態や位置によって治療計画は異なります。

片側だけ抜歯すると顔がゆがみますか?

片側の小臼歯を抜歯したことだけで顔がゆがむことはありません。ただし、歯の真ん中やスマイル時の左右差に影響する可能性があるため、顔貌と歯列を一緒に診断します。

顔と歯の真ん中は必ず合わせる必要がありますか?

必ず完全に一致させる必要があるわけではありません。噛み合わせに問題がなく、ご本人が見た目を気にしなければ、わずかなずれを許容する治療計画もあります。どこまで合わせたいかを治療前に共有することが大切です。

片方だけの八重歯は部分矯正で治せますか?

必要なスペースが少なく、奥歯の噛み合わせや正中に大きな問題がない場合は、部分矯正を検討できることがあります。ただし、正中の移動や抜歯スペースの閉鎖が必要な場合は、全体矯正が適することが多くなります。部分矯正の適応と限界は「八重歯は部分矯正で治せる?」でも説明しています。

片方だけの八重歯と歯の真ん中まで確認したい方へ

抜歯・非抜歯の両方を比較し、正中、口元、噛み合わせを含めた治療計画をご説明します。

参考文献

  • Baxi S, et al. Asymmetric Extraction Decision in Orthodontics. Cureus. 2023.
  • Dahiya G, et al. Effects of unilateral premolar extraction treatment on the dental arch forms of Class II subdivision malocclusions. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2017.
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  • American Association of Orthodontists. Biomechanics of Midline Correction.
  • British Orthodontic Society. Everything you need to know before having your teeth straightened.
  • Kokich VO Jr, Kiyak HA, Shapiro PA. Comparing the perception of dentists and lay people to altered dental esthetics. J Esthet Dent. 1999;11(6):311-324.